アズウェルが戦闘に用いる技は、通常の武術・体術とはまったく異なるものである。
邪剣と霊剣の性質、とりわけその力のありようを研究していったアズウェルは、ある時、それらが波動と似通った性質を持っていることに気づく。波動の概念や互いに打ち消し合う性質などは古代から知られていた。アヴァル機関内で実験を重ねたアズウェルは、やがて邪剣と霊剣の波動、その制御を可能とする理論を打ち立てる。
これはアルティメットスパームを引き起こすための主幹となったが、アズウェルの目的はそれだけではなかった。邪剣の欠片、霊剣の欠片を研究する中で、それらの内奥に「戦いの記憶」が「情報」として保存されていることを彼は突き止める。そして欠片に外部から特定の波動を当てることで、反射として特定の情報――彼は戦闘思念と名付けた――を引き出し、具現化する技術を生み出したのだ。
アズウェルの見地から見れば、それぞれの欠片は情報の集積体、いわば「辞書」のようなものだ。戦闘の局面に応じて、最適と思われる「戦闘思念」を引き出し、みずからの身体と武器形状に反映させて「再生」する。それがアズウェルの戦い方なのである。
アヴァル機関からの離脱を考えていたアズウェルにとって、自身の戦闘力が低いことは致命的な問題であったが、この技術理論の完成をもって不安は払拭された。そう、計画を実現に移す時が来たのである……。