アヴァル機関の中でも戦闘を主な任務とする実行部隊が身につけている戦闘法のひとつ。
中世の騎士道に立脚する機関の成り立ちから、かつては重厚な鎧兜を身につけ、槍、長剣、盾などを扱う技法が代表的なものであった。しかし時代の変遷と、秘密組織という性質に合わせ、その戦闘術も次第に軽装を前提とした実戦的な形へと変容していく。
両剣を扱う技もそうした流れの中、様々な創意工夫を経て編み出されたものである。通常の剣とは性質が大きく異なり、一振りで数度の斬撃を繰り出せるといった長所を持つ反面、自傷の危険も大きく、扱いには相当の熟練を要する。
さらにアヴァル両剣術には、剣を分離し、それぞれを両手に構えた状態で戦う特殊な用法が存在する。これは一種の奥の手として用いられ、対人戦闘においては相手に予測不能の連続攻撃を仕掛ける「決め」の一手となる。
グローがアヴァル両剣術に対してただ一つ不満だったこと、それは体系だった戦闘術であるにも関わらず、動作や技に名前がついていないことであった。この弱点を克服するため、グローは技一つ一つに名前をつけることを思いつく。
保守的な機関員を中心に反対の声も多かったが、技を他人に伝授するにあたって非常に便利であるという実際的な理由もあり、またグローが教本を熱心に執筆したことから、彼の努力は徐々に機関に認められていった。アヴァル機関の母体となった各種伝承を事細かに調べ上げた彼は、組織の納得する形で技の名称を決めていった。
グローはこの発想を啓蒙するために、ここぞという場面では技の名を叫ぶようにしている。