"強き魂を持つ者よ、お前のその稀有な魂が必要だ……"
死刃をかいくぐり、果し合いを制したばかりの覇王丸の心に、その声は直接語り掛けてきた。何者かと問いただすが応じる気配はない。
姿なき相手を睨むようにあたりを見渡した彼は、自分が骸流島に立っていることに気づいた。つい先ほどまで死合っていた場所からは遠く離れているはずだ。だが、彼の手にある愛刀・河豚毒には、確かに敵を斬ったばかりの感触が残っていた。ただただ島に留まるわけにもいかず、覇王丸は元居たはずの地へと戻ることにする。
だが、何かがおかしい。違和感の正体は旅を始めてほどなく判明した。どういうわけか、ここは覇王丸が生まれるよりもざっくり二百年ほど前――豊臣政権の時代――なのだった。
この怪異を引き起こしたと思わしき例の声を思い出し、なぜ自分が選ばれたのかを訝る覇王丸であったが、未だなお戦国の世の気風を残すこの時代は心地よかった。
血気盛んな剣士に出会うことも多く、幾度も刃を重ねることとなった。やがて覇王丸は、最強の剣と噂されるソウルエッジのことを知る。生まれた時代では、そのような剣のことはついぞ聞いたことが無かったが……?
"ソウルエッジを握るのは、お前の生きた時代には存在せぬこの世最強の剣士。だが、お前ならば存分に切り結ぶことも可能だろう……"
再びあの声が脳裏に響く。
「勝手言いやがって。手前みたいな得体の知れん存在に利用されるなんざまっぴらだ!」
即座に吐き捨てた覇王丸であったが、その一方で、この動乱の時代において最強と言われる剣士との死合を想うと、己の血が騒ぐのを抑えることはできなかった……!