武神と称された稀代の剣豪、ソン・ハンミョンの元で成家式大刀術を修めた彼は、その後も剣技を磨き上げ続けた。多くの闘いを経てその技は最早独自のものとなっており、師の勧めにより黄式大刀術を名乗るに至る。己のもつ跳躍力を最大限に生かした飛翔刀法、蹴脚術はまさしく空を舞う鳳凰が如きと称された。
より深く闇の者どもと接触するにあたり、彼はもう一つの力を手に入れることになる――暗行御史(アメンオサ)でもあるウォン・スヒョンから伝授された天罡六家の秘儀だ。ファンには仙人となる資質、つまり仙骨が無いために本来道術の資質は低いのだが、類まれなる剣士としての力量、肉体と意志の強さによって術の行使を成しており、これはこれで稀有な才であるというのはスヒョンの評である。
天罡六家はあらゆる鬼神を統括するという北極紫微大帝の呼気を身中に取り込んで成す六つの極意から成る。すなわち、呪符を扱う「符籙(ふろく)」、力ある言葉を操る「呪禁」、祈祷の術「齋醮(さいしょう)」、治療学である「経方」、風水と相術「形法」、そして鬼神の力を身に降ろす「神借(しんしゃく)」の六家である。
ファンが修めたのは「符籙」と「神借」のみだが、これまで研鑽を重ねた大刀術との組み合わせにより、唯一無二と言えるであろう存在――道剣士とでも呼ぶべきだろうか――となっている。