天と地の霊気が行きかう摩天嶺の頂にあって、三千日もの間、日月星辰の精気を浴び続けた黒刀。天罡六家(てんこうろくけ)を極めた道士であるウォン・スヒョンからファンへと授けられた。その内包する霊力はファンの符術を安定させ、また効力を高めるのに一役買っている。
また、スヒョンが所蔵する「仙器」と霊気で繋がっており、旅の途にあって摩天嶺から遠く離れていても、ファンは辟邪焔刀(へきじゃえんとう)と絡影禁鎖(らくえいきんさ)の二器を使いこなすことができる。仙器とは、物語や伝承に伝わる神仙に紐づけられる武器や道具である。そのほとんどは文壇家の筆によって創作された物であるが、俗世から隔てられた道士や仙人の手の中には、わずかながら人知を超えた力を宿す本物が存在しているのだ。
辟邪焔刀は触れた相手の生気を焼く可変自在の炎の刃であり、絡影禁鎖もまた触れた相手の影を縛り拘束する力を持つ。いずれも強力な天罡六家の秘儀であるが、黄式大刀術を駆使する剣雄ファン・ソンギョンによって、その有効性は飛躍的に上がっていると言える。
黒雷翻天の力によって一時的に顕現するこれらの仙器はもちろん、黒雷翻天そのものも祭器でありながら純粋に武器としても逸品であり、ファンの剣技によって多くの敵を誅すことになるだろう。