今でもティラは思い出す。彼女に殺人の技術を叩き込んだ「親鳥」の技を。死の旋律に乗って相手を翻弄し、みずからも楽しみながら追い詰めていく時のしなやかな身のこなし。獲物を仕留めた時の恍惚とした表情。それは美しかった……。
「親鳥」を手にかけた時のことはあまりよく覚えていない。獲物を仕留める時、ティラの脳裏に浮かぶのは、いつも死の輪舞を踊る「親鳥」の姿だ。「渡り鳥」とは訣別したティラであるが、よすがというものが残っているとすれば、この危険な戦闘技術そのものだろう。
ある時からティラの精神は大きくひび割れ、二つに割れてしまった。その影響は当然、戦いにも表れている。命のやり取りを心底楽しむかのようなそぶりを見せたかと思えば、一転、冷徹な憎しみをぶつけて相手を殺さんとする二面性。突然の変貌に相手が戸惑いを見せたなら、それは迅速な死をもたらすに十分な隙となるだろう。
そして彼女と相対した者が決して目覚めさせてはならないものがある。ひび割れた精神の奥底に眠る彼女の本性、それは触れてはならない文字通りの禁忌なのだ。