「鋼鉄のツグミ」を意味するこの名前は、「渡り鳥」に所属していた頃の暗殺者としての彼女の識別符号である。
円刃刀――全周が刃となっているこの剣呑な武器を扱うため、ティラが身につける手甲も鋼鉄製であり、独特の摩擦音はなるほど、鋼鉄のツグミのさえずりにも例えられるかもしれない。
このような武器によって仕留められた者の死に様は尋常のものではなく、暗殺は一目で「渡り鳥」のしわざと知れる。強烈な印象を残す「鳥葬」は、暗殺組織の力と恐怖を知らしめる一種の示威行動なのだ。
「渡り鳥」を抜けたティラにとっては、それも無意味なことだ。殺人欲求という強烈な渇きを癒やすため、もっとも甘美な旋律を奏でることのできる道具……今の彼女にとって、それがこの武器のすべてなのである。