ザサラメールの修めた武術は、元来は霊剣を守る一族に伝わる技である。
だが武芸や流派といった言葉をもって語るには、彼はあまりにも長大な時間を工夫に費やし、また数えきれぬ実戦を重ねてしまった。もはや源流となった技を見いだすことは難しく、我流と呼称するよりないのが実際のところである。偉容を誇る大鎌の使い方を始めとし、豊富な魔術の知識を活用した戦闘術は、もとより常人の模倣しうるところではない。
戦いの最中、ザサラメールは相手に魔術を用いた「呪詛」を刻んでいく。敵も気づかぬうちにその効力は蓄積していき、そして機が熟した時……ザサラメールは呪詛の効力を発動させて瞬時に犠牲者に止めを刺すのだ。相手を値踏みするようにしながら追い詰めていく、その戦い方はさながら死神のようである。
だがもし相手が呪詛の罠をかいくぐり、ザサラメールに肉迫するような強者であったなら、その時、その者は目の当たりにするかもしれない。ザサラメールの潜在的な力、まるで奈落の底からあふれ出す闇のようなその真の姿を。